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腸内細菌の種類や数、バランスは人それぞれ異なる

善玉菌、日和見菌、悪玉菌の割合は一般的には2:7:1 が理想とされますが、腸内細菌の種類、数、バランスは指紋のように人それぞれ異なります。お母さんの子宮にいるとき、胎児の腸内は無菌状態です。胎児は産道を通るときに母親の細菌をもらって生まれてきます。そして、生まれた後に接触する人や物から感染した細菌によって、5~6ヵ月かけて腸内フローラが形成され、生後2~3年で安定します。その後は環境や生活習慣などに応じて変化し、その人独自の腸内フローラが完成されますが、やはり形成時期に触れた細菌によってその基礎ができ上がります。生まれて最初に触れた人が持つホロビオームが、その後の腸内フローラ形成に大きく影響するのです。

一方で、腸内フローラは環境や宿主の状態にたくみに順応して個人に応じた細菌構成を年月をかけて作り上げていて、年齢や国によっても大きく異なります。一例をあげると、日本人の腸内細菌はポルフィラナーゼという酵素を産生することが報告されています。これは日本人の腸内細菌特有です。ポルフィラナーゼは海藻に含まれる多糖類を分解する酵素で、日本人の90% がポルフィラナーゼを産生する腸内細菌を有しているのに対し、欧米人ではたった3% です。これは、生魚や海藻などの海産物を多く摂取する日本人の食文化によるものと考えられます。

腸内細菌の多くは、消化や代謝、免疫などの有益な作用をヒトの体に提供することで、ヒトの体と一体化した生命として共生関係にあります。まるで体の一部であるような腸内フローラは「もう一つの臓器」とも呼ばれているのです。