髪質は頭皮の健康状態で決まる 大人の女性が取り組むべきは『インナービューティー』」
木下 裕章(きのした・ひろあき)
KINOSHITA GAIEN EAST STREET 代表(明治27年創業 五代目) 全国での講師活動 アジア人初のアメリカンオールスターズ(全米認定講師) アメリカ国内のコレクションでもヘアメイクを担当 NPO法人全国美容週間 第39代実行委員長 I CDインターコワフュール(世界美容家協会)会員
美容師という職業は華やかに見える一方、一日中立ち仕事で、食事の時間も不規則と、ハードな職業です。そんなことで、当美容室は社員の体調管理の手助けができるよう努めています。外部講師を招いて社内で食育セミナーを行ったり、寮に入居している社員に忙しい週末には手料理を提供したりと、できる限りの工夫をしています。実際に、食事に気をつけている社員は体調を崩しにくいことはもちろん、手荒れもしにくいということが言えるのです。
美容業界において美容師の手荒れは大変深刻な問題です。手荒れが理由で大好きな美容師の仕事を辞めざるを得ない人も多く、それは本人にとっても美容室にとっても非常に残念なことです。当美容室でも手荒れで悩む社員が何人かおりました。ステロイドや保湿クリームを使用してもその場しのぎでしかなく、根本的な改善にはなりませんでした。 お客様から髪に対して多くの相談を受けます。ただし、すでに生えてしまった髪の質をもう一度蘇らせるというのは、いくら優秀な技術を持った美容師でも無理な話です。高価なトリートメント剤で髪の表面を艶が出るように見せることは可能ですが、髪の深部を修復しているわけではないのです。つまり、美しい髪を手に入れるには、生える前、すなわち頭皮を健康に保つことを大切にして頂きたいのです。髪そのものの素材が良い状態であれば、手を加えなくても美しいからです。反対に素材がダメージを受けている状態ならば、手入れしてあげるしかありません。
頭皮の健康状態は色で分かります。健康な頭皮は青みがかっています。顔の肌の色と同じというのは、地肌の層が薄くなっているということです。一方、黄色の頭皮は肌で言うと肌荒れ状態、赤色は炎症状態です。黄色や赤みのある頭皮は、過酸化皮質が発生して毛根にダメージを与えている状態です。頭皮は体の中でもとくに細胞分裂が盛んな部位です。この細胞たちを常に健康で活発な状態に保つには、体の内側からアプローチすること、つまりインナーケアが必要になってきます。 髪を美しく見せるパーマやカラーは一方で髪の傷みの原因でもあります。正直にお話ししますと、カラーをすればするほど白髪が増えます。パーマをすればするほど髪はうねってきます。カラーやパーマが髪の老化を早めてしまうのです。ここに大きな葛藤が生まれます。髪を傷めるからと、白髪染めやパーマをせずに生活するというのは、文化的な観点でも精神的な観点でも豊かとは言えません。身だしなみはマナーであり文化です。髪型に自信を持てずに暮らしていくことは心身が健康とは言えないと思います。おしゃれを楽しむことは、とくに女性の人生にとって不可欠な要素です。 ですから、白髪とはうまく付き合っていくことが大切です。美容師はあらゆるライフステージのお客様に、それぞれの価値を与えていく仕事だと思っています。
当美容室では、頭皮環境の改善の一つとしてヘッドスパを取り入れています。血行促進やリラックス効果によって、全身の疲労回復につながるだけでなく、お顔のリフトアップ効果も期待できると人気です。そして、自律神経が副交感神経優位に切り替わるため、ヘッドスパを受けられるお客様のほとんどが施術中に眠ってしまうのです。自分自身を労り、精神的なストレスを軽減することも、活性酸素を増やさないために重要なポイントなのです。 私も講師活動で全国を回っていますから、毎日が体力勝負で睡眠や食事も乱れがちです。多忙なスケジュールの中でも活性酸素に負けない体づくりで髪や肌のハリ・艶も維持できていると思っています。