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わたしたちの行動をコントロールする腸内細菌

2019年2月、英科学誌「ネイチャー・マイクロバイオロジー」(Nature Microbiology)に「腸内細菌は人の精神的な健康に影響を及ぼす可能性があり、うつ病に関連すると考えらえる」という研究論文が発表されました。うつ病と一部の細菌との関連性が示唆されたのです。腸と脳は迷走神経を通じてつながっています。微弱な電気信号によって腸から脳へメッセージが伝えられます。腸が今どんな状況なのかという以外に「緊張感」や「幸福感」、虫の知らせのような「直感」も腸が感知し、神経伝達によって脳に伝えられます。情報を伝える「神経伝達物質」には、セロトニンやアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンが含まれます。

これらのホルモンを産生しているのはヒトの細胞だけではありません。腸内細菌も同様の物質を産生して迷走神経を刺激し、脳に情報を伝えています。なぜ細菌がこのようなことをするのでしょうか。それは、細菌たちにメリットがあるからです。たとえば、私たちが食べた食品に、ある腸内細菌の繁殖を助ける成分が含まれていたとします。この細菌はエサとなる成分によってさらに繁殖します。この時、細菌の代謝の過程で産生される物質は私たちに「幸福感」を与えます。すると私たちは、またその食品を食べたいと感じる。私たちは細菌が産生する物質によって、細菌がエサにしたい成分を含む食品をまた食べたくなるようにコントロールされるのです。こうして細菌たちはさらにエサを得て繁殖していきます。あなたの意思や行動は、あなた自身が決めていると思っていませんか?実は腸内細菌
の働きかけがあなたの意思の多くを決定づけ、行動をコントロールしているのです。