腸に広がるお花畑「腸内フローラ」
05.21.2021
私たちと共存する細菌たちは、「ヒトと共同体を成す微生物集団」という意味の「ホロビオーム」として捉えられています。腸内のホロビオームは、多彩で豊かなお花畑(フローラ)に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。さまざまな役割を持つ腸ですが、その働きを助けているのがこの腸内フローラの細菌たちなのです。
広さにしてテニスコートほどもある腸壁は、たった1層の細胞からなる粘膜によって外界と自己とを隔てています。この粘膜が皮膚と同様に、異物が体内組織や血液内に入り込むのを防いでいます。それを腸内フローラが手助けしているのです。腸内フローラの細菌たちによって産生される「脂肪酸」が、腸管粘膜の細胞の増殖を促進し、粘液の産生を促すことで粘膜のバリア機能を高めます。こうして異物の侵入を防いでいるのです。
腸内フローラを構成する腸内細菌は、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つのグループに分類されます。腸管内で細菌たちは、食べ物を分解して乳酸や酪酸、酢酸といった「脂肪酸」やアルコールなどの代謝物を産生します。ヒトの体にとって良い働きをする代謝物を作り出す細菌を「善玉菌」と呼び、有害な代謝物を作り出す細菌を「悪玉菌」と呼びます。そして「日和見菌」のグループは善玉菌も悪玉菌も含み、より優勢な方に働きます。